#001 Alexander McQueen

そして2006年秋冬コレクション「The Widows of Culloden」。当時薬物スキャンダルの渦中にありランウェイから遠ざかっていたケイト・モスを親交の深かったマックイーンが擁護し、ショーのフィナーレにあえて登場させたホログラム映像(三次元立体映像)で、柔らかな生地を幾重にも重ねたドレスを風になびかせステージ中央に浮かび上がり、優雅に舞い踊りながら再び青白い光となって消えてゆくモスが、映画『シンドラーのリスト』の音楽と見事に調和した様はまさにひとつの芸術作品であった。

ファッションデザイナーがクリエイターであることは言うまでもない。マックイーンも高いテーラード技術に裏打ちされたクオリティの高い作品を生み出す素晴らしいクリエイターであった。
しかし、デザイナーとしての稀有な才能だけではない、ファッションの枠を越えた表現力をも兼ね備えたマックイーンは、ファッションに音楽や舞台演出を見事に融合させることでファッションショーの芸術性を確実に高め、その表現力を余すことなく発揮したのである。
そして、デヴィッド・ボウイやビョークが彼とのコラボレーションにより新たな世界観を表現することができたように、彼の作品を身につける者は、その作品から自身の内面に更なる創造のパワーを与えられたに違いない。アレキサンダー・マックイーンは、ファッション界において「アーティスト」と呼ばれる、それ以上の存在であったのかもしれない。

ファッションと音楽を強く結び付け、その相互を高め合うことができるような、そんなファッションクリエイターが、今後イギリスより再び現れることを願ってやまない。

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